からだと畑の相似点

前回「体と畑の構造はリンクしている部分が多い」と書きましたが、今回はそれについて少し具体的に触れたいと思います。

 

わたしたちの腸内にはとてもたくさんの微生物が住み着いていますが、土の中も同様にたくさんの微生物がいます。

その環境を整えることが「良い土づくり」につながるのですが、これは人間にも同じことが言えると思うのです。

「腸内フローラ」という言葉があります。

腸内の微生物の様子を拡大して見てみるとお花畑のようだということからこの名前がついたようですが、健康な腸とはこのような状態であるようです。

 

土づくりは知ってか知らずかこのフローラを土の中につくる行為です。

そのために堆肥を入れ、発酵肥料を入れ、炭素循環農法という農法においてはキノコの廃菌床を土の中に入れたりします。

廃菌床はそのまんま微生物の塊ですから、これらの行為の最たる例と言えるかもしれません。

 

発酵と腐敗という現象があります。発酵はいいもの、腐敗は悪いものというイメージがあると思いますが、これは人間にとって都合が良いか悪いかという違いで実は根っこは一緒。どちらも微生物の働きの結果によるものです。

そして彼らの基本的な働きは、自身が分解することのできる有機物を分解していくことであり、発酵も腐敗も彼らの生命活動の賜物です。

どのような環境でも微生物はいますしどちらも自然な現象ですが、土を腐敗させてしまうとそこに根をはる植物は健全に成長できなくなり、結果的に病気になったり害虫の標的になったりします。

逆に良い発酵状態の土で育った植物は、微生物の活動から出る栄養分などの恩恵を受けて健康に育ちます。

 

一般的に有機栽培の農産物が健康的なのは、微生物が活躍しやすい場づくりをしているからです。

農薬を使う畑では微生物は繁殖できませんし、化学肥料を多用していると微生物の活躍できる環境が限られてしまいます。

 

この様子は人間の腸内に置き換えられます。

 

自然のものを食べ、健康的な食生活を送っていれば微生物が活躍できる環境が整い、腸内は健康的に保たれます。

そしてまた腸には血液をつくる仕組みがあるらしいのですが、そこでつくられた血液は全身を巡ることになります。つまり健康な腸でいることは全身の健康にも寄与することと言えるのではないでしょうか。

逆に抗生物質などの薬品を頼っていたり、食品添加物が使われているものを大量に食べていれば微生物は繁殖できませんし、栄養接種をサプリメントに頼りすぎていると微生物が活躍の場を失って良い発酵状態になりません。

 

薬品は対象を殺すことで健康を守りますが、その反面殺せないものが出てきた場合、それらから体を守ってくれるはずの微生物も殺されておりどうしようもなくなって体がダメージを受けてしまう場合があります。

近年「多剤耐性菌」という様々な薬品に耐えうる菌が増えてきていますが、このような菌に対抗するにはやはり微生物が活躍できる場を整えることが必要だと思います。

ちなみに、これは畑でも実際に起こっている事柄です。

 

また腐敗という観点からお話しすると、人間で例えるなら暴飲暴食など、無茶な食生活が引き起こします。

一気に食べ物が体内に入れてしまうために、健全な内臓の働きの許容量を越えてしまい体内に腐敗が起こりやすい環境を作り出してしまうためです。

畑に置き換えると肥料の大量投入。

集中的に施された肥料分は腐敗し、その土は根っこを傷つけ植物の健全な成長を阻害します。さらには病害虫を招く原因にもなり得ます。

何事も過ぎたるは及ばざるが如しですが、やっぱり畑も体も同じなんだなと思います。

 

肥料の施しかたは土地柄や作物によって様々ですが、自分の体を労るようにすれば間違いが少なくなるのではないでしょうか。

体のことを知れば知るほど、畑のことを知れば知るほど、お互いのことがよくわかってくる気がします。

時には早とちりや勘違いもあって失敗したりしますが、人間も自然の一部だということだけは間違いなさそうです。